だん、と腕を突かれたから驚いた。
 少し不快な色を示して顔を上げると、面白くもなさそうに紅い目があからさまな嫉妬を此方に向けている。
 
 「お前は俺だけ見てりゃ良いんだよ」
 「良く言う」
 
 フフ、と笑って身体を捻ると、威嚇するように土壁がぼろぼろと音を立てて崩れるものだから、仕方なしにもう少しマシな反応を返してやった。
 
 「お前こそ、俺だけ追いかけてりゃ良いんだよ」
 
 ひとつなぎの財宝なんてわすれちまえ。
 心にも無い言の葉を舌に乗せて口付けを送ると、はみ出た紅が酷く扇情的で。
 身体の何処か奥底で煮え切らない炎が燻ぶるのを感じた。



 2011.07.06.