御伽噺の終わり方

 「面白い夢を見たよ」
 
 ぽつりとペンギンが呟くのを聞いて、俺は窓の外から視線を引きはがした。
 
 「お前と俺が海賊やっててさ、敵同士なんだ。ローとキッドが船長で」
 
 ローは黄色いパーカを来ていて、キッドは相変わらず悪趣味な格好をしていたよ、と笑う。
 
 「お前、何であんな変な仮面被ってたんだ?」
 「…………知らん」
 
 乾いた笑いは酷く無知で、そんなペンギンが酷く愛しいと思う。
 
 「お前は」
 「うん?」
 「お前はどうだったんだ」
 「…………そうだなあ」
 
 遠くを見るように天井を仰いで、ペンギンは言った。
 
 「楽しそうだったよ」
 「…………」
 「最期にこの目に映ったのがお前で、本当に良かったと思ってる」
 
 思いもかけない言葉に刹那言葉を失うが、相変わらず彼はくすくすと笑いを洩らすだけで、その真意を図ることは出来ない。
 
 「夢だよ」
 「…………」
 「お前が今俺の前に居て、お前の前に今俺が居る。それで良いじゃないか」
 「…………違いない」
 
 たっぷりの沈黙の後漸く反応を返した俺に、ペンギンは満足そうに微笑んだ。



 2011.07.06.