ささやいて、ひとり
「…………っ」
「ん…………好い、か?」
「咥えたまま…………喋るな…………っ」
その小さな口に自分のものが咥え込まれているという状況を見下ろすだけでも苦しいのに、その上そんな目で見上げられたら、堪ったものじゃない。
粘り気のある水温に聴覚は犯され、閉じることもできない視覚と、巧みな舌使いに、五感は確実に追い込まれて行く。
ねっとりと這う舌の感触と、僅かに突き立てられた犬歯が先を引っ掻く刺激に、喘ぎを抑えるのが精一杯だった。
「…………ぅ…………」
「別段…………声を抑える必要は、無いだろう?」
「し、喋るなと言って…………ひ、あっ」
見せつける様に先をべろりと舐め付けるその扇情的な眼に眩暈がする。
より奥へ咥え込もうとする度に漏れる吐息が悪戯に表を撫ぜて、中途な刺激に身体が先を欲しがる。
良い様に翻弄されるキラーを見て満足げに微笑むペンギンの紅く染められた眦は、魔的とも言えるほどにぞくりとした色を奏でていた。
「…………ん…………あっ」
「…………ふっ…………ん、っく」
何処を如何刺激してやればキラーが善がり、どのタイミングで歯を突き立てあるいは裏を舐め上げてやればキラーが感じるのか、ペンギンは全てを知っている。
喉の奥までみしりと重量を持ったそれは咥えているだけで生理的な涙の出るほど苦しいものだったが、それでも透明な涙の幕を通して彼の悦とした表情を見るだけで、背筋にぞくりとした物が走るのだ。
「も…………出る…………っ」
「良いぞ…………出せ」
「…………あ、あっ…………あ…………!」
留めとばかりに少し強く根元を愛撫してやると、先走りよりもずっと強い、青臭い液が耐え切れなくなった先から飛び出した。
強い粘性を持ったそれを少し苦労して飲み下し、味わうかのようにぺろりと唇を舐めると、一連の流れを追っていたキラーが激しく赤面しているのが見て取れた。
「…………っ」
「!」
それ程に己の仕草は官能的だったのだろうか。
未だ眼前に揺れていたそれから急に迸った残りに咄嗟に反応は出来なくて、生温い白濁が顔面にかかった。
その感触は少し不快だったが、一つ一つを指で拭いとり口元へ運ぶ動作を見る浅葱の眼がより強い羞恥に染まっていくのを見て、そんな些細な感情はどうでも良くなってしまう。
跪いていた身体を徐に持ちあげて、未だ吐き出した欲の熱から立ち返れないでいる茫洋とした唇へ、ひとつキスを落とす。
柔らかで甘い感触にその眼は途端に情欲を灯して、一度離れた唇を引き戻し貪欲に色付いた紅を貪った。
舌先で割られた唇は歯列を割られることを容易に許し、性急に絡み合う舌の根と舐められる口蓋に腰が浮く。
「ん…………」
吐息が漏れ、招かれ甘咬まれた舌に喉が鳴る。
「は…………ぁ」
随分と長い接吻から漸く解放された頃には舌先の苦みも無くなっていて、あるのは只更に流れた涙の痕と、酸欠による眩暈だった。
「キ…………らぁ」
「…………お返しだ」
形成はいつの間にか逆転していて、肌蹴られた繋ぎの首筋にがぶりと歯が立てられた。
下肢へゆるりと伸ばされた手は確かに意図を以て、ペンギンを煽り立てる。
「全く…………何処であんな技術を身につけて来たんだ」
「ん…………」
「お前は、只俺啼かされていれば良い」
「…………良く言う」
その強すぎる浅葱の色に理性が削られるのを感じながら、なけなしのプライドを以てペンギンは言った。
「その俺に、咥え込まれて…………っ、あんあん啼かされていたの、は何処の、誰だ?」
「…………手加減はしないぞ」
「ひ、ぁっ」
労る様な動きをかなぐり捨てて突如中心を掴んだその強さに思わず嬌声が漏れる。
「ほら、言ってみろ…………如何して欲しい?」
「…………」
「お前の口で言ってみろ。さあ」
「フン…………精々、俺を楽しませて、みるんだな…………っあ」
「…………仰せの儘に、オヒメサマ?」
「…………んっ」
嫌に優しい口付けが嬉しくて、腰に這わされた手が酷く不快だった。
2012.02.09.